TSE STD 2163 アルトナー ALTONER
取得日 2026-06-06 セクター:サービス業(技術者派遣)
PRICE 1,980 時価総額 約210億円
PER / PBR 16.7× / 4.0× 業界平均 約20×/2×
ROE 24.10%
PEG 約1.5〜3.0(成長率の取り方で変動) 2超=割高ゾーン

第1章 発掘メモ・なぜ今この企業か

当ブログ「ハロのお宝企業発掘株ブログ」の発掘ファイル #04 は、設計技術者の派遣に特化した会社 アルトナー(2163)

最初に正直に書いておきます。この記事は、私にとって少し特別です。アルトナーは、本で学んだ「割安成長株投資」を、自分で決算書を読んで実際にやってみて、初めてうまくいった1社だからです。だから私は今も 保有(監視継続) しています。

ただ、成功談として書くつもりはありません。むしろこの記事の後半は、「良い会社を、良い株価で買えた。でも、その後どう売ればいいのか分からなくなった」 という、私の未解決の悩みの話になります。

きっかけを、先に4点だけ箇条書きで共有しておきます。

  • きっかけ: 割安成長株投資(個人投資家向けに語られてきた、ピーター・リンチ流の「身近な成長企業を割安に買う」という考え方)を本で学び、「自分でも決算書を読んで探してみよう」と動き始めた時期に見つけた1社です。
  • 発掘プロセス: 銘柄スクリーニングで候補を絞ったうえで、最後は自分で決算書を開いて、PER・EPS(1株あたり利益)・業績の伸び・事業が成長する仕組みを一つずつ確認して選びました。誰かに教わった銘柄ではありません。
  • 初見の感触: 事業(技術者派遣)は正直ぱっとしない、地味だと感じました。それでも「技術職は人が少ないから、需要はあるのかな」と思った程度の感触はありました。数字の質(高ROE・継続成長)は一級品でした。
  • 現在の判断: 保有中。本で学んだ通りに自分で発掘して、実際にうまくいった。でも今は、出口(いつ売るか)で迷っています。

発掘ルート: 自己学習(割安成長株投資を本で学ぶ)→ 自分で決算書を読んで発掘 現在のステータス: 保有中(出口に迷いながら監視継続)

第2章 この企業との出会い — 自分で決算書を読んで発掘した

第3章 ビジネスモデル — 人を回して稼ぐ構造

業界の基礎(20代向け)

まず、「技術者派遣」という言葉を解きほぐしておきます。

メーカーの設計・開発部門に、設計のできる技術者を「人ごと」貸し出す。
メーカーは、必要なときに必要な専門スキルの人手を、自社で抱え込まずに借りられる。

── 技術者派遣=設計のできる人を「人ごと」貸すビジネス。

メーカーは、自社で正社員として抱えると、開発の山が過ぎたときに人件費だけが残るリスクがあるため、その調整弁として技術者派遣を使います。ものすごく雑に言うと、「設計図を描ける人を、教育してから企業に貸す会社」 です。大きな工場も在庫もいらない代わりに、人(技術者)の頭数・稼働率・単価 で業績がほぼ決まります。

この会社を一言で

「設計エンジニアを、教育ごとメーカーに貸して稼ぐ会社」

ソフトウェア・電気電子・機械の3領域の設計技術者を、宇都宮・横浜・浜松・名古屋・大阪の5拠点で抱え、メーカーの開発現場に送り込みます(出典: EDINET 2026/1期 有報)。1962年設立の、60年以上続く会社です。主な顧客は、製造業 ── とりわけ 自動車関連メーカーと半導体製造装置メーカー です。

いきなり一番大事な数字 — 顧客集中

主要顧客売上に占める割合
本田技研工業17.1%
本田技術研究所13.3%
ホンダ系 合計30.4%

売上比率は、各社の売上 ÷ 連結売上12,046,664千円で算出(出典: EDINET 2026/1期 有報)

売上の約3割が、ホンダ系という1つのグループに集中しています。 これは後で「リスク」のセクションで、この記事の最大の論点として扱います。良いところだけでなく、引っかかるところも最初に出しておきたいので、ここに置きました。

事業構造図 — 「人を回し続ける運用」で売上が立つ

人を回し続ける運用力 採用 → 教育 → 現場で稼働 → また採用 の地道なサイクル
採用・教育 → 在籍技術者 人材プール

ソフト・電気電子・機械の設計技術者を採用し、教育してから現場へ。連結 約1,623名が在籍。

在籍技術者 約1,623連結・5拠点
顧客現場で稼働 → 売上 派遣 / 一部 請負

顧客の設計開発現場で技術者が稼働。売上は「在籍技術者数 × 稼働率 × 単価」で決まり、稼いだら次の採用へ回す。

売上 120億円2026/1期・自動車・半導体装置が中心

中央にあるのは難しい技術ではなく、「採用 → 教育 → 現場で稼働 → また採用」という地道なサイクル です。これが回り続ける限り、頭数と単価が積み上がって成長する ── そういう構造の会社だと、決算書を読んで理解しました。

第4章 企業の強み5項目評価 — 核は「運用力」

企業の強み(投資の世界では『経済的堀』『Moat』とも呼ばれます): 競合が簡単には真似できない、持続的な優位のこと。城を守る堀(moat)が深く広いほど敵(競合)の侵入を防げる、という比喩で語られます。本ブログでは20代読者向けに「企業の強み」という日本語で統一していきます。

アルトナーの強みを、5項目で評価してみます。

01 — BRAND

ブランド

60年の歴史と長期の取引実績はあるが、最終消費者向けではなく、メーカー調達部門への信用が中心。

02 — SWITCH

切替コスト

技術者が現場に習熟するため入れ替えにはコストがかかる。ただし派遣契約は更新制で、需要が落ちれば打ち切られ得る(出典: EDINET 2026/1期 有報)。

03 — NETWORK

ネットワーク効果

技術者が増えても、利用者同士の便益が増える構造ではない。

★ KEY 04 — PRICING

コスト優位(価格決定力)

高付加価値領域への配属で単価を上げてはいる(出典: EDINET 2026/1期 有報)が、単価は技術者の需給と顧客予算に左右され、強い価格支配力とは言えない

05 — BARRIER

規制・参入障壁

労働者派遣は許認可制で無資格参入は不可(出典: EDINET 2026/1期 有報)。ただし許可を持つ同業は多く、障壁は中程度。

私の観察 — 強みは「技術」ではなく「人を回し続ける運用力」

ここが、私がアルトナーを見ていて一番考えさせられたところです。

発掘ファイル #01 で取り上げたHOYAのような「100年磨いたガラス技術」というわかりやすい強みとは違って、アルトナーの強みは 「採用・教育・営業・サポートのサイクルを地道に回し続ける運用力」 にあります。これは堅実ですが、技術そのものが壁になっているわけではありません。だから私は5項目を軒並み「中」と置きました。

良い会社だけど、強みは中くらい。
買った当時の私は、ここを今ほど厳しく見られていなかったと思います。「数字が良いから」で半分くらい納得していた。今は「数字が良い理由=強みの正体」まで言葉にできるようになったぶん、評価が少し辛口になりました。

第5章 経営者・資本政策の評価(4項目)

企業の強みを見たあとは、その強みを継続させる「誰が舵を取っているか」「株主にどう向き合っているか」も確認しておきます。

項目評価観察
経営者の継続性現社長は会社設立(1962年)時の出資者一族で、創業家による長期の経営(出典: EDINET 2026/1期 有報 沿革)。在任年数の細目までは追えていません。
経営陣の自社株保有要確認大株主データを取りきれていないため、ここは保留にします(分からないことは分からないと書きます)。
資本政策(配当)配当性向50%をベースに、前年割れのない右肩上がりの配当を基本方針とし(出典: EDINET 2026/1期 有報)、実際に一株配当は8.8円(2016/1期)→84.0円(2026/1期)と一貫増配(出典: IR BANK 2009/01〜2027/01予)。株主還元の姿勢は明確です。
IR姿勢中期経営計画『Make Value for 2025 to 2029』や統合報告書を開示(出典: EDINET 2026/1期 有報)。標準水準。

配当性向: 稼いだ利益のうち、何%を配当として株主に配るか。50%なら、利益の半分を配当に回す、という意味です。

資本政策(株主還元)は、この会社のはっきりした美点だと感じています。「前年割れのない配当」を10年以上続けているのは、口だけでなく実績で示せている部分です。実はこの「配当が毎年増えている」という事実が、後で出てくる私の出口の迷いに深く効いてきます。

一方で、経営トップの在任年数や自社株保有といった「誰がどう舵を取っているか」の細部は、私はまだ十分に確認できていません。ここは次の宿題として残しておきます。

第6章 成長性 — 売上・利益・EPSの推移

CAGR(年平均成長率): 数年間の成長スピードを年率に直した指標。「売上CAGR 10%」なら、平均して毎年10%ずつ伸びてきた、という意味です。

過去の業績推移を整理します。私が買った当時、まさにここを自分で表にして眺めていました。

売上高(6期)
120.0億円
直近10年 約 10.4%/年(全期間19年 約 5.6%)
EPS(6期)
118.5
26.0→45.3→57.7→68.6→99.0→118.5円

出典: IR BANK 2009/01〜2027/01予

  • 売上CAGR(全期間・約19年): 約 5.6%/年
  • 売上CAGR(直近10年): 約 10.4%/年
  • 営業利益CAGR(全期間): 約 10.9%/年

売上は2016/1期の47.6億円から2026/1期の120.0億円へ約2.5倍、営業利益は4.3億円から18.2億円へ約4.2倍。利益の伸びが売上の伸びを上回ってきました。直近10年に絞れば、売上も二桁成長です。私が決算書を読んでいて「これは伸びている会社だ」と感じたのは、まさにこの利益の伸び方でした。

成長の源泉(私の観察)

成長ドライバーは、さきほどの売上の式そのもの ── ①在籍技術者数 ②稼働率 ③技術者単価 のどれかが伸びること。会社は中期経営計画で、ハイエンド領域への人員シフト(=単価向上)、請負・受託シフト、M&Aを掲げています(出典: EDINET 2026/1期 有報)。実際2025年に子会社2社を取得し、高付加価値配属で技術者単価も上がっています。方向性は実績で確認できます。

ただし1つ、今は正直に引っかかっていることがあります。売上は伸びているのに、EPS(1株あたり利益)は2025/1期の118.6円から2026/1期の118.5円とほぼ横ばいで、会社の2027/1期予想も117.5円とむしろ微減です(出典: IR BANK)。増収が、1株の価値にそのまま乗ってきていない。買った当時の私はここを気にしていませんでしたが、今は気になっています。後のバリュエーションと判断に効いてきます。

第7章 収益性 — 高ROEの中身

ROE(自己資本利益率): 株主のお金で年間どれだけ稼いだか。24%なら、100円の自己資本で年24円稼ぐイメージ。 総資産回転率: 持っている資産を、1年で何回ぶん売上に変えたか。財務レバレッジ: 自己資本の何倍の資産で事業をしているか(借入の効かせ方の目安)。

ROEは「純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ」に分解できます(デュポン分解と呼びます)。アルトナーの推移はこうです。

年度ROE純利益率総資産回転率財務レバレッジ
2017年1月期22.5%7.0%2.25回1.42倍
2020年1月期22.5%8.7%1.84回1.40倍
2023年1月期22.1%9.7%1.63回1.40倍
2025年1月期26.8%11.4%1.66回1.42倍
2026年1月期24.1%10.2%1.32回1.79倍

ROE・売上・総資産・株主資本は出典: IR BANK 2009/01〜2027/01予。純利益率は ROE÷(回転率×レバレッジ) の恒等式による算出値(端数ベースのため、EDINET確定値の最新期純利益率10.4%等とは小差あり)

業界・市場平均のROEが概ね10%前後であることを考えると、20%超を長年維持しているのは明確に高い水準です。

私の観察 — 「借金で膨らませた高ROEではない」

この表で私が一番安心したのは、高ROEの担い手が「純利益率の上昇」(7.0%→11.4%)だということです。財務レバレッジ(借入の効かせ方)は長く1.4倍前後で安定していて、借金でROEを水増ししてはいません。2026/1期にレバレッジが1.79倍へ上がったのは、子会社取得と長期借入による一時的な変化と読んでいます(出典: EDINET 2026/1期 有報)。

最新期の営業利益率は15.1%(出典: EDINET 2026/1期 有報)で、後で見る同業3社の中でも最高でした。収益性の質は、文句なく高いと思います。ここは買った当時の私も、今の私も、評価が変わらない数少ないポイントです。

第8章 バリュエーション — 割安と言い切れない

PER(株価収益率): 株価が、1株あたり利益の何倍か。利益に対して株価が割高か割安かの目安。 PEGレシオ: PER ÷ 利益成長率(%)。1未満で割安、1〜2で妥当、2超で割高の目安。割安成長株を見るときに重視される指標です。

指標(2026-03-11 終値ベース)

PER 同業中位・1,980÷118.47で算出
16.7×
PBR 高ROEを反映してやや高め
4.0×
PEG 成長率の取り方で1.5〜3.0に振れる
約1.5〜3.0
配当利回り 市場平均 約2.1%/一株配当84円÷1,980円
4.24%
割安寄り 妥当 割高寄り
指標
株価1,980円(出典: J-Quants 2026-03-11終値)
EPS118.47円(2026/1期実績・出典: EDINET 2026/1期 有報)
PER16.7倍(算出: 1,980 ÷ 118.47)
時価総額約210億円(小型・算出)
ROE24.10%(出典: EDINET 2026/1期 有報)
配当利回り約4.24%(算出: 一株配当84.0円 ÷ 株価1,980円)

市場での株価の動き(過去の推移)

ここからは「市場で株価がどう動いてきたか」という公開データの話です。有価証券報告書に載っている、各期の年間の高値・安値を並べます。

年度年間 最高株価(円)年間 最低株価(円)
2022年1月期939773
2023年1月期1,084814
2024年1月期2,441989
2025年1月期2,6311,468
2026年1月期2,2581,524

出典: EDINET 2026/1期 有報(提出会社経営指標)

この表を、私の視点で読み解いておきます。2022年ごろに800円台だった株価が、2024〜2025年には2,400〜2,600円台までつけ、その後は調整して、直近(2026-03-11)は1,980円です。 一時のピーク(2,631円)から見ると、市場全体としては約25%ほど下げて、今に至ります。

つまり市場は、ある時期にこの会社を「見つけた」。地味な技術者派遣の会社が、数年で株価3倍近くまで評価された局面があったわけです。そして今は、少し冷めて、落ち着いたところにいます。この株価の動きが、後で書く私の出口の迷いの舞台です。

私の観察 — 割安と「言い切れない」

PEGは、分母にどの成長率を置くかで姿が変わります

  • 全期間の売上CAGR 5.6% を分母にすると PEG 約2.98(割高ゾーン)
  • 直近10年の売上CAGR 10.4% を分母にすると PEG 約1.61
  • 営業利益CAGR 10.9% を分母にすると PEG 約1.53

(いずれも PER 16.7 ÷ 各成長率(%) で算出)

つまり、どの成長率を信じるかで「割高」にも「やや割高」にも見える。1.0未満の「明らかに割安」には、どの取り方でも届きませんでした。私が買った当時は、株価がもっと安く、ここがはっきり割安に見えていました。「安いうちに見つけられた」── その判断は、結果として正しかったと思っています。問題は、ここから先です。今の株価は割安とは言い切れない。では、どうするのか。それが次以降のテーマになります。

第9章 同業他社との比較

「技術者派遣の中でアルトナーを選ぶ理由はあるか」を、読者の判断材料として並べておきます。

指標 アルトナー 2163 メイテックGHD 9744 フォーラムEng 7088
PER 16.7×18.7×30.3×
ROE(中央値) 22.5%20.4%16.6%
営業利益率 15.1%14.6%13.3%
配当利回り 4.24%5.82%3.12%
FOCUS 緑=各指標で「際立つ値」。営業利益率が最も高く、PERは最も低い。一方、配当利回りはメイテックGHDのほうが高い。株価基準日: 2026-03-11(出典: J-Quants)。ROE中央・営業利益率は出典: IR BANK 2009/01〜2027/01予

3社の中で、アルトナーは 営業利益率が最も高く、PERは最も低い。数字の質と割安さのバランスでは悪くありません。一方、配当利回りはメイテックGHDのほうが高い。「収益性と株価のバランスで選ぶならアルトナー、利回り重視なら別の選択肢もある」 という並びでした。

注: 比較のために並べただけで、他社を売買推奨しているわけではありません。各社の発掘ファイル化は今後の検討対象です。

第10章 投資の物語と前提・リスク

ここまでの数字と観察を束ねると、私がアルトナーを発掘し、今も持ち続けている理由 ──「投資の物語」── が見えてきます。

自動車・半導体製造装置メーカーの研究開発投資が続く限り、アルトナーは技術者の頭数を増やし、稼働率と単価を上げて増収増益を続ける。本で学んだ割安成長株投資の型 ──「これから伸びる会社を、まだ安いうちに買う」── を、私はこの会社で実際に試して、ある程度うまくいきました。今の控えめなPERが、利益成長とともに是正されていく── これが、買った当時に私が見て、今も基本的には信じている景色です。ただし「割安かどうか」は成長率の取り方しだいで、現時点の株価が割安と断定はできません。

物語の前提条件(これが続く限り保有・3項目)

1

製造業(自動車・半導体装置)の開発需要が続く

とくにその中核であるホンダ系(売上の約30.4%)との取引が継続すること。

↔ リスク #1
2

借金に頼らない高ROEが崩れない

純利益率主導の高ROE(財務レバレッジ約1.4倍)の質が、競争で薄まらずに維持される。

↔ リスク #2
3

増益が1株の価値(EPS)に乗ってくる

「頭数頼み」から「単価も上がる」へのシフトが進み、増収が横ばいのEPSにちゃんと反映される。

↔ リスク #3

リスクと反証(物語が壊れる条件・前提と1対1対応)

1

【最有力】ホンダ系30.4%の取引縮小

売上の約3割が本田技研(17.1%)+本田技術研究所(13.3%)の1グループに集中。製造業全体が好調でも、この1グループの方針転換(EV内製化・調達見直し等)だけで物語が揺らぐ。一番確率の高い崩壊経路。観察対象は「上位顧客の構成比の推移」。

↔ 前提 #1
2

高ROEの質の劣化

単価競争や人件費上昇で利益率が落ち、ROEが中央値22%を明確に割る、または営業利益率が二桁前半へ低下したら警戒する。

↔ 前提 #2
3

増益がEPSに乗らないまま

すでに兆候あり。増収でもEPSは横ばい、会社予想も微減(出典: IR BANK)。売上が伸びても1株の価値が伸びないなら、株価が報われる理由が弱い

↔ 前提 #3

顧客集中への見方が、当時と今で変わった話(正直な記録)

このホンダ系30.4%という数字について、私の見方は 買った当時と今ではっきり変わりました

買った当時(数年前)も、顧客集中はリスクだとは思っていました。ただ、「これだけ利益を上げているのだから、この取引は維持できるのでは」と期待して、そこまで大きなリスクとは考えていませんでした。今振り返ると、当時の私は勉強も考えも足りていなかったと思います。

今は、同じ30.4%という数字を見て、「これは大きな依存先だな」と、より厳しく受け止めるようになりました。数字は当時から変わっていません。変わったのは私の見方です。これは成功の話ではなく、持ち続けながら考えが育った過程として、ここに残しておきます。なお、技術者派遣業界の単価動向や、取得した子会社2社の実力を、私はまだ十分に確認できていません。分からないことは分からないとして残しておきます。

第11章 判断・監視ポイント・出口の迷い

本記事執筆時点で 保有中。一方で、私はこの株の「出口」で迷っています。

判定:保有中(監視継続)/理由:物語の前提はまだ大きくは崩れていないと見ている

この記事の心臓部 ──「良い株価で売る」のは、もっと難しい

ここからが、この記事で一番書きたかったことです。

「良い会社を見つけること」と「良い株価で買うこと」── このふたつは、投資の本でもよく語られます。私はアルトナーで、この両方を、自分の力で初めて達成できました。それは素直に嬉しい体験でした。でも、本にはあまり書かれていない第3の難しさがあります。それは 「良い株価で“売る”こと」 です。

正直に書きます。アルトナーは、買ったあと、市場に「見つけられた」ように株価が大きく上がった局面がありました(さきほどの株価推移の表で見た、2,400〜2,600円台の時期です)。私が当初に立てた方針 ──「割安成長株は、割安が解消されたら売る」── に従うなら、本来はあの局面で利益を確定させるべきでした。ところが、私は 売る判断ができませんでした。理屈では「ここで一度売るのが筋だ」と分かっていたのに、手が動かなかった。

正直に、そのとき頭の中で一番強かった気持ちを書いておきます。ひとつは 「まだ、もっと上がるのではないか」という期待 でした。そしてもうひとつ、それと裏表で強かったのが、「ここで売って、そのあとさらに値上がりしたら、“もっと後で売ればよかった”と後悔するのではないか」という、後悔への恐れ でした。損が怖かったのではありません。早く利確しすぎたことを後悔するのが怖くて、売る手が止まったのです。この2つの気持ちが綱引きをして、結局「もう少しだけ様子を見よう」を繰り返しているうちに、当初の方針なら利益を確定すべきだった局面を逃しました。そして株価は今の水準まで落ち着き、私は今も持っています。

今の私が保有を続けている理由は、正直に言えば 「配当利回りが良いから」 です。前のセクションで「連続増配は美点」と書きましたが、それは同時に、売れなかった自分への“もっともらしい言い訳”になっているかもしれない── そういう揺れも、私の中には確かにあります。配当で持っている、というのは、本当に前向きな判断なのか。それとも、あのとき手が止まった「後悔したくない」という気持ちを、いまも引きずって、出口の判断から逃げているだけなのか。まだ、自分でも答えが出ていません。

良い会社を見つけて、良い株価で買えた。でも、良い株価で“売る”のは、もっと難しい。

次の決算で見るもの

MAIN 主・数値で追う(3項目)

  1. 上位顧客(ホンダ系)の構成比が、30.4%からどう動くか(集中が和らぐか、深まるか)
  2. EPSが横ばいを脱して伸び始めるか(増益が1株の価値に乗ってくるか)
  3. 稼働率と在籍技術者数の推移(成長エンジンが回り続けているか)

SUB 補助・定性で観察(2項目)

  1. 取得した子会社2社が、利益にちゃんと貢献してくるか
  2. ROE中央22%・営業利益率15%台という収益性の質が保たれているか

下落時・上昇時の自己問答(出口の迷いへの自分なりの処方箋)

私はこの株で「上がったときに、もっと上がる期待と後悔への恐れで売れなかった」経験をしました。だから自分への問いを、株価や気分ではなく 物語の前提(3項目) に紐づけ直しておきます。

MAIN 出口の自己問答(株価でなく前提に紐づける)

  1. 物語の前提が崩れたら → 株価がいくらであれ、保有の根拠が失われるので、売却を含めて判断し直す。
  2. 前提が崩れていないのに株価が大きく上がったら → ここが私の最大の弱点(「後悔したくない」気持ちが判断を曇らせる場面)。次は「全部売る/一部売る/持ち続ける」を事前に決めておくことを宿題にする。
  3. 前提が崩れていないのに株価が下がったら → 事業が壊れていないなら、慌てない。
  4. 狼狽売りリスクの自己評価: 中(売れなさすぎる=「握りっぱなし」方向のクセが自分にあると自覚)。

次回 #04-Q1 — 決算後45日以内に公開予定

次回 四半期決算(アルトナー IR ページで公表され次第)の公表後、本記事の 物語の前提1〜3の進捗・ホンダ系構成比・稼働率・EPSの伸び、そして 私自身が「出口」をどう考え直したか を統合して整理します。

📅 PUBLISH · 決算後45日以内

第12章 まとめ・学び・FAQ

アルトナー(2163)を発掘ファイル #04 として整理してみて、私が一番強く感じたのは、上で書いた一文 ──「良い会社を見つけて、良い株価で買えた。でも、良い株価で“売る”のは、もっと難しい」── でした。

私はこの会社で、本で学んだ割安成長株投資を、自分の手で初めてうまくいかせました。それは確かに小さな成功体験でした。でも、その成功が、そのまま 「いつ売ればいいのか分からない」という新しい迷い を連れてきました。「もっと上がるかも」という期待と、「早く売って後悔したくない」という恐れ。この2つは、たぶん多くの人が一度はつまずくところだと思います。

投資の本は、「良い会社の見つけ方」と「良い買い方」はたくさん教えてくれます。でも「良い売り方」「自分が決めたルールを、上がった高揚と“後悔したくない気持ち”の中でどう守るか」は、結局、自分で経験して、何度もつまずきながら身につけるしかないのかもしれません。私は今、まさにそのつまずきの真っ最中です。次の決算のあとに、また自分の答えがどう変わったかを書きに、アルトナーに戻ってきます。

よくある質問

アルトナー(2163)の物語が壊れる条件は何ですか?

私は「ホンダ系1グループ(売上の約30.4%)の取引縮小」「製造業の開発需要後退で稼働率・単価が同時に下がること」「増収でもEPSが横ばいのまま伸びないこと」の3点を観察対象にしています。このうち1つでも現実化したら、保有の根拠を整理し直します。

現時点のハロの判断は?

保有中(監視継続)です。本で学んだ割安成長株投資を、自分で決算書を読んで初めてうまくいかせた1社で、いまも持っています。ただし、大きく上がった局面で当初の方針なら利確すべきだったのに売れず、出口で迷っているのが正直なところです。あのとき手が止まったのは、「まだもっと上がるのでは」という期待と、「早く売って、そのあとさらに上がったら後悔しそう」という恐れが綱引きをしたからでした。今は配当利回りの良さを理由に保有していますが、それが前向きな判断なのか、出口から逃げているだけなのか、自分でもまだ答えが出ていません。

次に何を見ますか?

主軸は3つ ── 上位顧客(ホンダ系)構成比の推移、EPSが横ばいを脱するか、稼働率と在籍技術者数。あわせて、自分自身の「売る基準」を株価ではなく事業の前提(物語の前提条件)に紐づけ直せるかを考え続けます。

この記事は買い推奨ですか?

いいえ。本記事は個人投資家ハロの観察記録であり、投資助言や売買推奨ではありません。最終的な投資判断は読者ご自身で行ってください。記載数値は記事公開時点(株価は2026-03-11、財務は2026年1月期実績ベース)のものです。

01 HOYA(7741) ─ ハロの発掘ファイル #01 こちらは「買う側のタイミング」で迷っている記録。アルトナー(売る側で迷う)と並べて読むと、入口と出口の難しさが見えてきます。